| ★作者 | 武田百合子 |
| ★出版社 | 中央公論社 |
| ★装幀 | 鈴木康司 |
| ★データ | 1982年1月刊 中公文庫、読売文学賞 |
| ★ISBN | 4-12-200894-8 |
| ★分類番号 | 915.6（紀行：近代） |
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昭和44年、夫の武田泰淳とともに友人・竹内好のロシア旅行に 同行した著者による旅行記。 ６月に日本を離れて、約１ケ月かけての大陸横断。 この頃って、まだ冷戦中じゃなかったっけ？ それにしては、アメリカ人観光客もちょいちょい出てきてるんだけど。 ベトナム戦争中でもあるんだよね。不思議な感じです。 と、まぁ、そんな世界情勢の背景はあるとして。 すごいよ、百合子さん。全然物怖じしてないわ、この人。 泰淳氏が「百合子は犬だよ。どこへ行っても、臆面もなく、ワン、なんていってるんだ」 と言ってもなんのその。 片言のロシア語と堂々の日本語で、ちゃんと意志の疎通をはかって楽しんでるんだから。 しかも、日本語のわからない横柄なガイドの娘に、笑顔で 「スパシーバ。あんたはしんからブスね」と別れのあいさつをしちゃうお茶目さん。 世界的に有名な建造物も良ければ良い、 つまらなければつまらないとハッキリ書き留める。 こういう人が最も旅を楽しめるんだろうな…とうらやましくなりました。 それにひきかえ旦那衆は、やれビールだ、ウオッカだと飲んだくれてます（笑） 百合子さんの記録はさらに、毎日の食事や土産物、ツアー仲間の様子などにも及びます。 最高齢で関西出身のおじいちゃん、銭高老人。 若い頃にロシアを訪れたことがあるらしく、 なにかというと「ロッシャはえらい国じゃあ。わしゃ知っとった」という。 老人特有のわがままな面もあるけど、 百合子さんの目を通すととても愛らしい爺様になるからおもしろい。 …って、途中まで読んで気がついたよ。この人、ゼネコンの錢高組の創業者!? 最後にひとつだけ難癖をつけると、巻頭に地図が載っているのですが、 内容と連動してないんですけど。 行ってない場所を示すより、実際にたどった行程を記しておいてほしかったなぁ。