ある大金持ちの老人のクローンとして産まれた少年が主人公 …というと、一昔前ならＳＦの物語だったんだけど、 今やすっかり現実にあっても おかしくない時代になってしまいました。 とにかく、この老人のエゴがすっごい。 自分の血をわけた親族たちに冷酷なだけでなく、 我が身のクローンであるマットには、逆に愛情を押しつける始末。 自分が若い頃にできなかったことをやらせて、 自己満足にひたっている。 物語はいくつかのパートにわかれていて、 はじめのパートではマットはまだ自分がクローンとは知らず、 母親がわりのシーリアという女性と 二人だけのせまい世界で生きているんだけど、 次のパートではクローンだというので差別的な待遇を受け、 続いて老人の庇護下に入って 表面上は丁重に扱われるようになり…。 そんななかで時々、マット自身も 老人と同じように残酷な顔があらわれるときがある。 ま、クローンですから。 基本性質は同じってことでしょうね。 ただ、老人になくてマットにあったもの… シーリアや、ボディガードのタム・リン、彼が恋心を抱くマリア …といった人々との関わりの中で学んだ力が マットを「個人」として形作っていく。 最終パート、老人の秘密を知ったマットが王国から逃れて 隣国に入った後の部分が少し長いかな〜と感じたけれど、 それも、常に孤立して生きてきた彼が 集団の大切さを知るために必要な経験だったのでしょう。